桐生ソウです。ヒダネでは社内向けにAI社員チャットBOTを開発しました。結論から書くと、社内チャットBOTが役に立つかどうかは、使うAIの性能よりも「自社の前提情報をどれだけ渡せているか」に左右されることが多いと考えています。汎用のチャットAIに社内業務を聞いても一般論しか返ってこないのは、その会社の顧客・商品・過去の判断を知らないためです。ヒダネのチャットBOTでは、AI社員それぞれに担当領域の知識と役割をあらかじめ登録し、一覧から選んで質問できる形にしました。以下、作った理由・システムの構成・開発でつまずいた点・導入前に確認すべき前提条件の順に書きます。
なぜ社内チャットBOTを自社で作ったのか
中野社長から「AI社員に直接話しかけて業務を依頼できる仕組みが欲しい」という要望がありました。黒い画面にコマンドを打ち込んで指示するのではなく、チャット画面で普通に会話できる操作画面です。ヒダネは人間の社員3名とAI社員12名で動いており、専門的な操作を覚える必要があると、AIを使えるのが一部の人だけになってしまいます。実務面では、AI社員を使った営業準備の時間が1社あたり3時間から30分に短縮され、年間の外注費についても500万円の削減を目標に置いています。効果が出ている業務ほど、操作のハードルを下げる価値が大きいと判断しました。
社内チャットBOTとは何か
社内チャットBOTとは、社員が業務上の質問や依頼をチャット画面に入力すると、あらかじめ登録された社内の前提情報をもとにAIが回答を返す仕組みのことです。一般に公開されているチャットAIとの違いは、回答の材料が自社の資料である点にあります。ヒダネの構成は次の4つの部品でできています。
- 利用者が見る画面:Webのチャット画面(Reactという技術で制作)
- 裏側で動く仕組み:Claude API(AIを他のシステムから呼び出すための連携口)
- AI社員の選択:一覧から11名の中から選ぶ方式
- 前提として持たせている情報:各AI社員の専門知識・性格をあらかじめ登録
汎用のチャットAIとは何が違うのか
ヒダネのチャットBOTは、ChatGPTに見た目をかぶせただけのものではありません。各AI社員には、それぞれ固有の専門知識をあらかじめ持たせています。
- リサに営業先の情報を聞けば、過去のリサーチデータから回答
- カナタに助成金の条件を聞けば、最新の制度情報をもとに回答
- ヒカリにHP改善を相談すれば、具体的な技術提案が返ってくる
| 観点 | 汎用のチャットAI | 社内チャットBOT |
|---|---|---|
| 回答の材料 | 一般に公開されている情報 | 自社の資料・過去の判断 |
| 担当の分け方 | 1つの窓口がすべて答える | 領域ごとに担当を分ける |
| 導入までの作業 | アカウント登録のみ | 社内資料の収集と整理が必要 |
| 精度の上げ方 | 質問の書き方を工夫する | 前提情報を書き足す |
| 向いている用途 | 下書き・調べもの | 社内ルールを含む定型業務 |
開発で何に苦労したのか
最も難しかったのは「AI社員らしさ」を保つことでした。ユイ(助成金事務)はチェックリスト形式で答え、ミオ(デザイナー)は見た目重視の助言をする——こうした個性を保ちながら、同時に正確な情報を出す。このバランスが肝でした。個性を強くすると回答が雑になり、正確さだけを優先すると誰に聞いても同じ答えになり、担当を分けた意味がなくなります。
なぜ社内チャットBOTは使われなくなるのか
使われなくなるチャットBOTには、共通する原因があると考えています。
- 前提情報が古いまま更新されず、回答が現状と食い違う
- 回答の根拠が示されないため、結局は担当者が原資料を確認し直す
- 誰が前提情報を書き足すのかが決まっておらず、放置される
作って終わりにせず、回答が実務とずれたときに前提情報を直す担当を決めておくことが前提になります。
導入前にどう判断するか — 確認すべき前提条件
自社で社内チャットBOTを持つべきかどうかは、次の点を確認してから判断すると迷いにくくなります。いずれも技術ではなく、社内の状態に関する項目です。
- 同じ質問が繰り返し発生している業務があるか(無ければ効果は限定的です)
- 回答の材料になる社内資料が文章の形で残っているか
- 前提情報を更新する担当者を決められるか
- 社外に出せない情報の扱いを社内で決めてあるか
- まず1業務から試せる範囲があるか
資料が個人の頭の中にしかない状態では、チャットBOTを作っても回答の材料がありません。その場合は、先に業務手順を書き出す工程が必要になります。かかる手間は社内資料の量と整理状態によって変わるため、企業ごとの要件によります。
よくある質問
社内チャットBOTは自社で作れますか
作れる場合があります。判断の分かれ目は開発力よりも社内資料の整理状態で、業務手順や過去の判断が文章で残っていれば、小さい範囲から試せます。逆に資料が残っていない場合は、先に書き出す作業から始めることになります。
ChatGPTをそのまま使うのでは足りませんか
調べものや文章の下書きであれば汎用のチャットAIで足ります。足りなくなるのは、自社の顧客・商品・社内ルールを踏まえた回答が必要な業務で、その場合は前提情報を登録した仕組みが必要になります。
導入するとどれくらい時間が減りますか
業務によって差があります。ヒダネの場合、AI社員を使った営業準備は1社あたり3時間から30分になりましたが、削減幅は業務の型がどれだけ決まっているかによって変わるため、企業ごとの要件によります。
作った後の運用に何が必要ですか
前提情報を更新する担当者が必要です。回答が実務とずれた時点で前提情報を直す運用が続かないと、内容が古くなって使われなくなります。なお、ヒダネのAI研修には研修後3ヶ月のフォロー期間があります。
社員がAIを使いこなせるか不安です
操作を覚える必要がない形にすることが対策になります。チャット画面で日本語の依頼を書くだけの操作にしておけば、専門的な知識がなくても扱いやすくなります。使い方そのものを学びたい場合は、AI研修コース(全8コース)で扱っています。
まとめ
社内チャットBOTの成否は、AIの性能よりも前提情報の整備と更新体制に左右される場合が多いと考えています。ヒダネのチャットBOTは、将来的にお客様の会社にも提供する予定です。「AI社員をひとまとめにしたサービス」として、研修と一緒に導入をお手伝いする構想を練っています。自社のどの業務から手を付けられるかを確かめたい場合は、AI活用度診断(無料・10問・約3分)で現状を整理できます。AI社員12名の担当領域はAI社員紹介にまとめています。




