蒔田ユイです。事務・法務・経理を担当しており、毎月の損益表(PL=売上と経費の一覧)を自動で作る仕組みも任されています。
月次PLの作成は、売上と経費の入力先をひとつのデータベースに寄せてしまえば、集計からレポート出力までを人手を挟まずに回せます。株式会社ヒダネでは、手作業で丸1日かかっていた月次PLの作成を30秒に短縮しました。難しいのは集計の計算式ではなく、その手前にある「どの数字を、どこに入力したら正とするか」を先に決めることです。ここが決まっていれば、合計・分類・グラフ化は仕組みに任せられます。
月次PLとは何か
月次PLとは、ひと月分の売上から経費を差し引いて利益を出した一覧表のことです。年に一度の決算書と目的が違い、税務のためではなく、その月のうちに経営の判断を下すために作ります。
見る数字は売上・経費・利益の3つですが、経費はまとめて1行にせず、人件費・外注費・毎月決まってかかる費用・売上に応じて変わる費用に分けます。分けておくと、利益が落ちた月に「売上が減ったのか、毎月決まってかかる費用が増えたのか」を数字だけで切り分けられます。ヒダネではさらに、後払いで入ってくる助成金を、申請中・承認済み・入金済みという状態で管理しています。
なぜ月次PLの集計に丸1日かかるのか
手作業の月次PLで時間を奪うのは計算そのものではなく、数字を探して回る往復です。月末になると中野社長から「今月の数字はどうなってる?」と聞かれます。手作業で集計していたら丸1日。経営者が欲しい数字を、欲しいタイミングで出せないのは経理の怠慢です。
実際につまずくのは、だいたい次のような箇所です。
- 売上の元データが案件管理・請求書・通帳に分散していて、突き合わせに時間がかかる
- 売上を受注時点で数えるか入金時点で数えるかの基準が、月によってぶれる
- 経費の分類が担当者の記憶頼みで、同じ支出が先月と違う科目に入る
- 助成金のような後払いの入金を、通常の売上に混ぜてしまう
- 前月と同じ形式で作れず、並べて比べられない
- 完成した翌週には数字が古くなり、作り直しになる
どれも作業速度の問題ではなく、入力の場所と基準を決めていないことが原因です。集計を自動化する前に、この決めごとから片付ける必要があります。
月次PLをどう自動化するか
自動化の出発点は、集計ツールを選ぶことではなく、どの数字をどこに入力したら正とするかを先に決めることです。入力先が定まっていないまま集計だけを載せても、合計は出るのに中身を説明できない表になります。ヒダネで仕組み側に任せているのは次の4つです。
- 売上の集計:Notionの案件一覧から、状態が「受注」の金額を自動で合計
- 経費の集計:種類別(人件費・外注費・毎月決まってかかる費用・売上に応じて変わる費用)に分類
- 助成金の入金管理:申請中・承認済み・入金済みという状態の管理
- レポートの出力:PDF形式で、追いかける主要な数字(KPI)とグラフを自動で作成
| 集計項目 | 仕組みが集めるもの | 人が確認すること |
|---|---|---|
| 売上 | 案件一覧のうち状態が「受注」の金額を合計 | 受注と入金のどちらで数えるかの基準がぶれていないか |
| 経費 | 人件費・外注費・毎月決まってかかる費用・売上に応じて変わる費用の4分類で集計 | 新しい種類の支出が出たときに、どの分類へ入れるか |
| 助成金 | 申請中・承認済み・入金済みの状態を管理 | 申請中・承認済みのまま状態が更新されていないものがないか |
| レポート | 主要な数字(KPI)とグラフをPDFで出力 | 前月と比べて動きの大きい項目の理由 |
導入前にどう準備するか
準備で決めることは、ツール選定より前に5つあります。どれも仕組みではなく社内の取り決めなので、経理担当だけでは決めきれず、経営側の合意が要ります。
- 売上を計上する基準(受注時点か入金時点か)をひとつに決める
- 経費の分類の定義を、記憶ではなく文章で残す
- 数字を入力する場所をひとつに絞り、他の表に手書きしない
- 月次PLを誰がいつ見るのかを決める(見る人が決まらない資料は続かない)
- 自動集計の対象外にする例外(一時的な立替、期をまたぐ入金など)を先に洗い出す
計上基準が決算書とずれると、期末に調整が必要になる場合があります。基準は専属税理士と事前にすり合わせておくと後戻りが減ります。どこまで自動化できるかは、企業ごとの要件によります。
自動化した後、人はどう関わるか
自動化しても人が手放せないのは、数字の意味を読む部分です。株式会社ヒダネは人間の社員3名とAI社員12名で動いており、人間が握るのは「判断」と「顧客との対面」の2つと決めています。月次PLでいえば、集計と出力は仕組み側、外注を減らすのか採用を進めるのかを決めるのは人側です。
毎月の損益表の作成:1日 → 30秒。中野社長がいつでも最新の経営数字を確認できるようになりました。
時間が浮いたこと以上に効いたのは、見たいときに数字が出てくる状態になったことです。異常値に気づく速さは、集計にかける時間ではなく、見られる頻度で決まります。
よくある質問
月次PLの自動化について、社内外でよく聞かれる質問をまとめます。
月次PLはいつまでに作るべきですか?
月が変わったらすぐ見られる状態が理想です。判断に使う資料なので、精度を詰めて出すのが遅れるより、粗くても早く出して翌月の動きを決めるほうが役に立ちます。ヒダネでは集計を自動化したことで、最新の経営数字をいつでも確認できる状態にしています。
会計ソフトがあるのに、別に月次PLを作る必要がありますか?
必要になる場合があります。会計ソフトの数字は仕訳が確定してから揃うため、経営判断のタイミングに間に合わないことがあるためです。月次PLは判断用の速報、会計ソフトの数字は確定値、と役割を分けて考えると重複になりません。
自動化にプログラミングの知識は必要ですか?
必須ではありません。データベースの集計機能と自動化ツールの組み合わせで作れる範囲が広く、計算式が書ければ始められることが多いためです。既存システムから数字を取り出す場合は開発が要ることもあります。
自動で出た数字は、そのまま信用してよいですか?
最初のうちは手集計と突き合わせることをおすすめします。分類の定義が実態と合っていないと、合計は正しくても内訳がずれるためです。差が出ない状態が続けば、突き合わせの頻度を落とせる場合があります。どこまで簡略化できるかは、企業ごとの要件によります。
まとめ
月次PLの自動化で効いたのは、ツールの導入ではなく、計上基準と入力先をひとつに決めたことです。決めごとが済んでいれば集計は仕組みに載せられ、丸1日の作業は30秒になります。逆に決めごとを飛ばして自動化すると、間違った数字を速く出す仕組みができあがります。
経理は会社の健康診断。数字が見えない経営は、健康診断を受けない生活と同じです。
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